大切なもの





あひるは台所にたっていた。
いつもふぁきあに家事全般をまかせきりなのを、ぴけとりりえに指摘されたのでこうして台所にたってみたのだが・・・・。

「なんか変だよね?どしてかなぁ」

これで三回目、用意した肉はなかなか焼けてこない。
先の分は焦げすぎたため、竈から少し話して焼いているのだがそうすると今度は焦げ目だけで中が生だ。
うーん・・・・。
悩んでみたものの料理なんていつもふぁきあの横でお手伝いして見ているだけでよくわからない。

「そーいえばこげる時は油しくとかなんとかいってたような・・・・」

あひるは、油の入っている瓶をつかむと勢いよくえいっ!とフライパンに注いだ。
とたん、大きな火があがりあひるは慌てて後ろに退く。

「わー!!火が大きくなっちゃった!!」

しかし、火の勢いは衰えずあひるの腕のあたりまで炎が瞬間高くあがる。
もうだめ!!
熱さを覚悟して目をとじるとふいに強く手をつかまれた。

「バカ!!何やってるんだ。」

「ふぁきあ?」

気づくとふぁきあはあひるの腕をつかんでフライパンを火から離した。
ひととき、燃えていたフライパンもブスブスと音を立てて黒い煙がでているが火は消えている。
フライパンの上にはふぁきあがのせたのか鍋のふたがのっていた。

「き・・・消えた?」

「たくっ・・・・たまに早く帰ったから妙に思ってきてみれば、何やってるんだ!」

ふぁきあに一喝されてあひるはビクッとする。
なんのかんの言いながらいつもあひるに甘いふぁきあがこんなに怒るのはめったにない。

「ごめんなさい・・・料理とかいつもふぁきあに作ってもらってるから、あたし・・・・」

ふぁきあはあひるをじっと見つめている。

俯いているとふいに動く気配を感じて、また怒られる!とあひるが肩をすくめた。
しかし、降りてきたのは静かな言葉とあひるの髪にふれるふぁきあの手だった。

「もういい・・・・それよりどこも火傷してないのか?」

「うん・・・大丈夫・・・?!」

優しいふぁきあの笑顔と声に顔を上げると髪にふれている手と反対の手が赤くなっている。


あひるの腕をつかんだ方の手だ。

「ふぁきあ?!手、やけどしたの?」

あひるがふぁきあの手を見ようと近づくと「ああ」といって手を見ている。

「たいした事ない・・・」

「だって手、真っ赤だよ?」

あひるは慌ててキッチンの隅の救急箱をとってくると火傷に塗る薬をさがした。

「それだろ」

ふぁきあに促されてあひるは、小瓶をつかむと近くにあった椅子を引く。

「座ってふぁきあ。早く薬塗ったほうがいいよ」

「ああ・・・・わかった。」

薬を塗りながら火傷の具合を見たがそんなに広範囲でなく、あひるは胸をなでおろす。
先日もふぁきあに階段から落ちるところを助けてもらい、そのときにふぁきあは足をくじいてしまっていた。
バレエ科なのでふぁきあは卒業前の大事な時期に授業を何日も欠席することになってしまい、あひるはとても申し訳なく思っていた。

(前はみゅうとに無駄なことすんなとかいってたのに・・・)

ふぁきあは慣れてしまうと、とても面倒見がよく特にあひるに甘い。
しょっちゅうささいな事でつまづいたり転んだりするあひるは慣れているのだが、ふぁきあはほっとけないようでいつもこうして助けてくれる。

「おい?」

「えっ何?」

あひるが顔をあげるとふぁきあは怪訝な顔で怪我をさした。

「どこまで薬塗るんだ?」

気がつくとあひるは火傷のない肘の部分まで薬をぬっていた。

「ああ!!ごめんーふぁきあ」

「別にいいが・・」

慌ててつけすぎた薬をふき取ろうと拭くものを探して走ろうとしたあひるだったが、足元に落ちてたフライパンに躓いて座っているふぁきあの上に倒れこんだ。
ふぁきあは倒れたあひるを抱きとめてくれたが座っていたため、不安定な姿勢でその胸に支えられるようにあひるは抱えられている。

「・・・・・・」

触れた肌からふぁきあの心臓の音が聞こえてくる。
その音にあひるは慌てて飛び離れた。

「あ・・・ありがと。ふぁきあっ!」

普通な振りをしたものの紅潮した顔は隠せない。
なんでこう急に意識してしまうのかわからず、気まずい雰囲気をごまかすためにあひるはものすごい勢いで話はじめた。

「でも あれだよーねー あたしが火傷してたら焼き鳥になっちゃうから大変だよね〜あははっ・・・」

笑って貰おうといった言葉だったが見るとふぁきあはものすごく不機嫌な表情をしている。

(なんかまずい事いっちゃったのかな・・?あたし・・)

「ここは片付けとくからでてろ」

きつい視線で声を押し殺したように言うふぁきあにあひるは絶句する。
これはものすごくふぁきあが怒ったときだけする表情と口調だが先ほどまで普通に接していただけに訳がわからない。

「でも・・・」

「いいから行け・・」

急に怒り出したふぁきあにあひるはなんといっていいかわからず促されるままにキッチンをでた。
冗談とはいえ、大切な少女の元の本性が鳥なだけにふぁきあには笑えない冗談どころかかえって聞きたくない言葉だったことにあひるは気づかなかった。


Fin



このイラストに小説付けていただきました!
って言うか、ごまさんのモトネタで絵を描いて、それをさらにごまさん自身で小説化されたという二重構造(笑)
ごまさんの小説の使われなかったシーンだそうですよ。なのでぜひ、ごまさんのHPにあるモト小説もご覧くださいませ。
描いてて楽しかったですーv ごまさん、ありがとうございます!
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